多汗症とは?症状によって保険適応になるケースも
2021年5月21日
今年は例年に比べて梅雨入りが早いです。
湿度が高く蒸し暑い日も出てきましたが、「汗かき」でお困りの方は、季節を問わず症状に悩んでいる方が多いのではないでしょうか。
多汗症とは?
多汗症は、汗の量が異常に増加してしまう疾患です。汗をかく部位により分類されます。
- 全身性多汗症:全身の汗が増加します。特段原因のない特発性もありますが、原因に甲状腺機能亢進症や糖尿病、低血糖などの疾患を有する場合や薬剤性、妊娠、肥満などによっても多汗になります。
- 局所性多汗症:脇や手のひら、足の裏など体の一部に限局して汗が増加して、QOLの低下をきたすことが多いです。
汗には気温や運動等による体温上昇を抑える役割があり、汗が体温を一定に保ってくれているおかげで、私たちの身体は正常に機能することができます。
ですが、多汗症になると体温調節に必要な量を大きく上回る汗をかいてしまうのです。
具体的には手汗のせいで本や書類に触れなくなってしまったり、大量の汗で臭いが気になって落ち着かなくなる、といったケースが見られます。
掌や脇の汗には交感神経の働きが関与していると言われており、精神的な緊張などに左右されると考えられています。
こうした症状から「洋服にいつも汗でシミができる」「臭いで周囲に迷惑をかけているかもと思うと不安」といったご相談をいただくことも多いです。
それぞれの生活習慣やお悩みに沿って治療法をご提案致しますのでお気軽にご相談ください。
※当院では、手術による治療法は行っておりません(注射、飲み薬、塗り薬に対応)。
飲み薬での治療
アセチルコリンという神経伝達物質を抑制する抗コリン剤(プロ・バンサイン)を服用することで汗を抑えることが可能です。
主な副作用として口が渇く、便秘、頭痛等が挙げられます。
料金は保険適応で3割負担の方であれば28日分で1000円程度です(別途診察代要)。
塗り薬での治療
飲み薬と並行して行いやすい治療として「塩化アルミニウム溶液」を患部に塗る方法もあります。
塩化アルミニウム溶液は、汗を出す管の細胞に働きかけ、これを塞ぐことで発汗量の減少を狙います。
有用性も広く認められますが効果は一過性であり、中には使用部位に皮膚炎を起こす方も見られます。
※皮膚に異常が出た場合は用量、使用頻度を見直し適切な塗り薬による治療を同時に行い、基本的には治療継続が可能となります。
また、脇の多汗症に限られますが、「エクロックゲル」が新薬として登場しました。
日本初の保険適用の原発性腋窩多汗症外用剤です。
1日1回、両脇への塗布で効果が期待できます。
注意事項としては緑内障や前立腺肥大の方には使用できません。
副作用(抗コリン作用)により眼圧が上昇したり、尿閉を誘発することがあります。
容器も工夫されておりアプリケーターを使って薬液に手を触れずに塗ることができます。
新薬の為、1本(約2週間分)ずつしか処方はできませんが3割負担の方であれば14日分で約2000円程度になります(別途診察代要)。
ボトックス注射による脇多汗症の治療
脇汗の手術は怖い、傷跡が気になる、けど飲み薬や塗り薬等での日常的なケアが面倒、といった方にはボトックス注射がおすすめです。
脇汗は、エクリン腺という汗腺から出ています。
発汗を促すのは、飲み薬のご説明でもお話した通り、神経伝達物質のアセチルコリンです。
脇の下にボトックスを打つとアセチルコリン分泌が抑制されて過剰な発汗を抑えることが可能です。
注射後数日で汗の量が減りはじめ、効果は半年程度持続します(効果には個人差があります)。
汗が特に気になる季節にだけピンポイントで受けることも出来ますし、効果が薄くなってきたタイミングで再びボトックス注射を受けることで、持続的な効果を保つこともできます。
脇汗の程度が重い場合、医師の診察により「重度の原発性腋窩多汗症(えきかたかんしょう)」と診断される場合があります。
重度の原発性腋窩多汗症と診断された場合は保険適応でボトックス治療を受けることが可能です。
当院では、保険適応のボトックス治療を行っています。
初診時には、同意書の作成、治療日の日程調整、麻酔クリームを手渡しさせてもらいます。
早くても2回目の受診日から治療が可能です。 3割負担の方ですと約2万3千円になります(診察代込)。
【詳しくは、下記リンクをタップしてご覧ください】
まとめ
多汗症は体質の影響が大きいことから明確な予防が難しいですが、ボトックス注射による治療を受ける事で多くの方が症状の軽減を実感し、煩わしい脇汗ケアから解放されています。
大切な仕事の場面で汗が気になる、一日に何度も制汗剤を塗り直している、汗じみが気になって服が自由に選べない、といったお悩みを抱えている方は皮膚科専門医による安全なボトックス注射を是非ご利用下さい。